TOP > バックナンバー > Vol.13 No.2 > 多機能触媒微粒子メンブレンフィルタの開発
すべての内燃機関の後処理法として、機能を有する微粒子により構成されるメンブレンフィルタを提案している。ここではその1例として、三元触媒粒子メンブレンフィルタの製作を試みた。公称粒子径200nmの三元触媒微粒子の懸濁水を超音波噴霧器により霧化させ乾燥させると、その水滴に含まれる微粒子が凝集し1~2ミクロン径の球状三元触媒粒子が浮遊する。それを既存フィルタに堆積させ三元触媒メンブレンフィルタが構成される。これを表面空孔堆積後に一旦焼成、その後ケーキ層堆積後に焼成するといった2段階焼成により強固な三元触媒メンブレンフィルタが製作できることを明らかにした。
図1には、三元触媒粒子メンブレンを製作する実験装置の概略を示す。平均粒径200nmの三元触媒粒子の懸濁水を容器に入れ超音波噴霧器により水滴をキャリアガスである空気中に浮遊させる。さらに希釈ガス(空気)と合流し管状加熱炉に導かれそこで水分が蒸発することにより、最終的には三元触媒微粒子のみが凝集する。この水滴1個に含まれる三元触媒ナノ粒子の数により凝集後の粒子サイズが制御される。懸濁水の三元触媒粒子20wt%においては平均粒径が1.6μm程度となる。この浮遊した三元触媒微粒子は、従来基材のGPFへ導かれ、粒子状物質(PM)が堆積されるようにメンブレン層を形成する。
凝集三元触媒粒子によるメンブレンフィルタの製作過程図2には、三元触媒メンブレンフィルタのSEM像と製作過程におけるフィルタ前後の圧力損失上昇の時間経過を示す。メンブレン層をエポキシ樹脂にて包埋し断面を研磨することにより、そのSEM像から空隙率を算出すると59%であった。また、図2右側の圧力損失上昇の時間経過から、従来基材にすすが捕集される際の圧力損失上昇と同じように、時間とともに初期から300秒までは三元触媒粒子による架橋が形成されていることが理解できる。その後およそ700秒までは表面空孔内に三元触媒粒子が堆積している。そして線形に圧力が上昇しているところでは微粒子によるケーキ層が形成されていることが理解できる。
2段階による焼成過程図3には、三元触媒メンブレン層の焼成方法を示す。図2にて説明したように圧力損失上昇から三元触媒粒子の堆積量を把握することができる。そこで図3左上に示したように、表面空孔堆積が完了した時点で一旦焼成する(1段階目焼成)。焼成方法は図3右上の700℃、4時間保持とした。その後さらに三元触媒粒子をケーキ層まで堆積させ、同じプロセスにて焼成する(2段階目焼成)。これにより、ジルコニアやセリアを含む三元触媒粒子と基材の熱膨張率が数倍ほど異なることによる焼成時の破損を回避することができる。この2段階焼成法により、図2右下に示したように三元触媒粒子メンブレンを製作することができる。
メンブレンフィルタによるすす粒子捕集過程の電子顕微鏡タイムラプス可視化図3には、三元触媒粒子メンブレンフィルタによるすす捕集過程の電子顕微鏡タイムラプス可視化像とその時の圧力損失上昇を示す。ここですすは炭素粒子発生器(DNP digital2000, Palace)を用いて導入されている。捕集開始から20秒後には中央の1~2μm径の表面空孔にすすによる架橋が観察できる。30秒後にはそれが塞がれ、50秒後にはケーキ層に移行している。このため、従来に比べて、右下に示したように初期圧力損失は高いがすす捕集が進むにつれて低くなることが示されている。
ここでは従来の三元触媒微粒子を用いてメンブレンフィルタを構築することができた。三元触媒機能とすす捕集機能を一体化したこのフィルタは、低圧力損失であるとともに初期から捕集率ほぼ100%を示し、わずか40μm厚のメンブレン層においても従来にほぼ等しい浄化性能を有することが別途示されている。三元触媒のみならず、目的に応じた素材を使いかつ異なる機能を有する微粒子メンブレンを積層するなど柔軟な構成を可能にする。多様な燃料や内燃機関に合わせた利用方法の系統的な活用が期待される。
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